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紫耀くんの相手役が知英ちゃんになる日まで

「北斗~ある殺人者の回心~」を読了して*かなりネタバレを含みます

来年、WOWOWドラマにて優馬くんの主演が決まった「北斗~ある殺人者の回心~」原作を読了しました。

北斗 ある殺人者の回心 (集英社文庫)

北斗 ある殺人者の回心 (集英社文庫)

読み終わって一言、

これ5話でまとまりますか?

たしか優馬くんのドラマって5話でしたよね?(違ったらすんません)5話で収まるような内容量じゃなかったんですけど。


回心*1とあるだけに、主人公である橋爪北斗の気持ちの変化を表したかったのではないかと、個人的には思った。



さて、本題へ。

以降ネタバレを含みます

たぶんドラマは裁判のシーンから始まるんじゃないかな?と個人的には思った(それか事件のシーンから)。裁判のシーンから始まり、過去を振り返りながら裁判していくのかな?と。そう考えると、裁判が5日間だったから1話ごと1日分ずつ放送するのもありなのかな?と。
なぜそう思ったかと言うと、読んだ方はわかると思うのですが本作品の半分が捕まった後の話なのである。読む前は犯してしまった事件自体がメインだと思っていたので、半分いくまえに事件が終わってしまったことには正直に驚いた。そういうところから考えて、筆者は裁判をメインで書きたかったのだと感じた。

話の流れは大まかに、幼少期→少年期→青年期と流れている。橋爪北斗が事件をおこしたのは20歳の時なので、まだまだ大人になりきれていない子どもなのかもしれない。物語は幼少期から始めるものの本作品の冒頭は

「橋爪北斗は誰かに抱き締められた記憶がなかった」

である。これはやはり、橋爪北斗を1から語り始めるのではなく、過去へ戻る形で話を進めていく意図があったのではないだろうか。なぜ抱きしめられたことがなかったのか、それを説明するのに幼少期から説明するのが1番いい流れだったのだと思う。

橋爪北斗の幼少期は両親からの酷い虐待のみであった。指示を出していたのは父である橋爪至高だが、母・美砂子も虐待に加担していたのは事実である。美紗子もまた、至高からの暴力を受けていたが、私が何より残酷だと感じたのは美砂子は至高からの暴力のはけ口を北斗にむけていたことだ。北斗は実の母から針金ハンガーで叩かれ、全身にミミズ腫れができていたのだ。後に美砂子は、この時のことを「叩いているうちに楽しくなっていた」と語っている。


そんなある日、いつまでも北斗の額に残るあの傷ができたのだ。
至高はドライバーで北斗の額をえぐり、その傷は頭蓋骨まで到達したのだ。この時の至高は北斗に

「忘れるな、お前は俺の息子だ。(中略)そのことを忘れないようにお前の額に刻んでやる」

と言っていた。もしかしたら、自分の命がもう短いことに至高は気づいていたのかもしれない。北斗はこの至高から攻撃を2度受けている。


北斗は父親譲りで頭が良かった。さすがの至高も受験勉強をしている北斗にはあまり強くあたらなかったという。入試が終わり、自己採点をする為に学校に行った北斗に急な連絡が入った。
重い腰をあげて北斗が家に帰ると美砂子が慌ただしく支度をしてた。至高が病院に運ばれたのだ。至高は精神的な病気で当分入院することとなった。そこからはあっけなかった。至高はその後、末期の膵臓癌が見つかり亡くなった。
「やっと平穏な日々がおくれる。」そう思っていた北斗だったが、実際はそうではなかった。

私はここで「母からの虐待が始まるのか?」と安易な考えを持っていた。しかし、実際はそれよりもさらに残酷であった。
美砂子は至高からの暴力に依存していたのだ。わざと至高に叱られた時の行動をし、息子北斗に自分のことを攻撃させていたのだ。北斗もまたそれを止めることができず、手を上げてしまうことに悩んでいた。
美砂子との生活の中で北斗は自分が父のようになってしまうのを恐れていた。このままではいつか美砂子を殺してしまうのではないだろうかと。そんな自分を助けて欲しく、ここで始めて児童相談所の富岡にそれを相談するのであった。富岡は後の裁判でも北斗側にたち、当時の状況を話してくれるのだ。
富岡のアドバイスにより北斗は美砂子の元を離れることにした。
美砂子の元を離れ生活する北斗の前に1人の女性が現れた。それが綾子だ。綾子はすでに何人も里子を育てあげているベテランで、北斗を里子として迎え入れた。最初の頃は、綾子を信じれず試すかのように悪さばかり北斗はしていた。そんな北斗を綾子は叱ることはなかった。

この作品の中で私が1番好きな一文がある。
それは悪事ばかりしていた北斗が綾子に、なぜ自分を叱らないのか?と問いただした時の綾子の答えである。

「こんなに大きくなるまで、もう十分なくらい北斗くんが叱られてきたからかな」

この暖かい言葉にもちろん感動したし、何よりこの言葉のチョイスに感銘をうけた。今まで小説に付箋など付けたことがなかった私が初めてそこに付箋を貼った(133ページ7行目)。
これらの綾子の愛情を機に北斗は人生で初めて、安らぎを得るのである。しかしそんな素敵な日々は長く続くことはなかった。

綾子に肝臓癌が見つかったのである。

人生はなんて残酷なんだろう。やっと、北斗にとって安らぎの場所が見つかった矢先に、その大切な人を北斗から奪おうだなんて。
しかし、残酷なことはこれだけではなかった。末期の癌と診断された綾子につけ込むかのように、医療詐欺にあってしまうのだ。末期の癌が治ると言われ高額の波洞水という水を毎日購入していた。ただそれを飲むと綾子が喜んでいるようで、北斗は金額を綾子に教えることなく毎日払い続けていたのである。そのお金は綾子が北斗の学費の為にと、貯めていてくれたお金だった。
もちろん北斗も薄々詐欺だということは気づいていたものの、綾子を見ると辞めることはできなかったのである。このまま綾子には伝えずにいよう、北斗はそう心に決めていた。しかし、それまでもうまくいかなかった。綾子が亡くなる数日前に綾子に詐欺の事がバレてしまったのだ。綾子はそのまま失意のうちに亡くなってしまう。心の支えを失った北斗には波洞水の開発者である生田友親への復讐心しか残っていなかった。

北斗は生田を殺す為に、用意周到に準備をしてついに決行の日をむかえた。すでに詐欺容疑で逮捕間近となっていた生田に北斗は焦っていたのだ。生田の会社にて待てども戻ってくることのない生田、それをまつ北斗は持っていたナイフを従業員に見られてしまう。焦った北斗は気が動転していたのか、従業員を殺めてしまうのだ。そして、また1人それを見た従業員を殺めてしまった。

北斗はすぐ次の日逮捕された。
事情聴取においても北斗は「今僕がここを出たら、真っ先に生田を殺しに行く」と生田への殺意を隠すことはなかった。


若いのにこんなにも沢山の経験し、つらいことばかりなのに生田を殺すこともできず、北斗を不憫にも思った。どこまでこの作品は北斗に試練を与えるのだろうかとも思った。しかし、生田を殺せなかったことがこの作品のミソであったのだ。
予定通り生田を殺すことができていたら、裁判など一瞬で終わっていただろう。しかし、殺すつもりではなかった2人を殺めてしまったことで、物語は盛り上がるのだ。
北斗は被害者に対する殺意はあったのだろうか?衝動的なものではなかっただろうか?そして、何より北斗の幼少期の経験が極刑か減刑かを左右することとなった。もちろん、虐待されてきたから犯罪を犯してもいいなんて理由にはならないと思う。減刑に対してもそうだ。でも、北斗のことを知れば知るほど、果たして刑をくだすことが正しいのだろうか?と考えさせられた。

日本には死刑という極刑*2がある。これは、死を持って罪を償うということ。少年犯罪でも初めて死刑判決が出たことは記憶に新しいだろう。現在では約7年~15年程で刑を執行されたような気がする(曖昧)。
日本において、死刑の次に重い刑は無期懲役である。日本に終身刑は存在しない。無期懲役では、何も問題なくいればある一定の期間で刑務所を出ることができる。現在は約35年ぐらいだろうか。例えば北斗の場合は20歳なのでだいたい35年刑務所にいて、その後でることができたとしても、55歳。まだまだ若い年齢ではある。そうやって、社会に出てくることがいいことなのか、悪いことなのか。難しい問題である。私は死刑と無期懲役にはあまりにも差がありすぎると感じている。

話を戻そう。
北斗は極刑か、もしくは減刑かで裁判されることとなった。罪のない2人の女性を殺めたのはもちろん大罪である。北斗は自分が死刑になることを望んでいた。どんな理由があれ、自分は大罪を犯したのだと自覚していたからだ。それに北斗は自分の過去を掘り起こされるのを嫌がった。虐待をうけてかわいそうな子だとか同情されるのが嫌だったようだ。しかし北斗の望みは叶わず、裁判では全面的に北斗の幼少期の虐待のことが取り上げられた。
証言台には児童養護施設の富岡も立ってくれた。富岡は「僕が見てきた子何千人の中で、北斗くんは5本の指に入るぐらい酷い扱いをされていた。(ニュアンス)」と語っている。それほどまでに北斗の幼少期が悲惨なものであった。だが裁判官に「では、北斗くんの他に犯罪を犯した子はいますか?」という問に、「…いません。」と答えたのだった。

ここで私はハッとした。
虐待をされていたから犯罪をおこすことは必然ではなく、ほとんどの人がまっとうに生きているんだと。

証言台には富岡の他に、北斗と同じく綾子に里子として育ててもらった明日美もいた。彼女は北斗のことを本当の弟のようにかわいがっていた。もし北斗に極刑が下った場合、面会できるのは親族のみとなる。それをおそれた明日美は北斗に婚姻関係を求めた。これは明日美が橋爪北斗という人間そのものを好いていたというのもあるだろう。しかし、北斗はそれを受け入れなかった。自分のせいで配偶者が死刑囚になることをおそれていたのだ。
北斗も読者も明日美が切り札だと考えていただろう。もちろん私自身もそう考えていた。

北斗にも知らされることなく、本当の切り札である人物が法廷に現れた。

北斗の実の母である美砂子である。

美砂子の登場に北斗は動揺して感情を露にした。冷静を保っていた北斗があんなにも暴れたのは、あの時ぐらいだろう。
美砂子は幼少期に北斗にしてきたことを全て話した。自分の社会的立場が悪くなるのは分かっていたはずなのに、本当に全部さらけ出したのである。そして、その場で美砂子と北斗は親子の縁を完全に切ったのだった。

この作品の中でもう一つ、私が好きな表現をしている所がある。これは、内容と言うよりは言葉のチョイスが絶妙で、好きな表現だ。北斗の過去が法廷で語られた際、北斗の額にできた傷について話が出た。富岡が「それは父親にドライバーでえぐられたからだ」と言った時の表現だ。

「その場にいた人々が一斉に息を吸って、法廷の空気が薄くなった。」

そこにいる全ての人がハッと息を呑んだ音が聞こえてくるような表現である。(434ページ4行目)

北斗側だけが証言台に立つ訳ではない。
被害者遺族も証言台に立った。1人目の遺族は「家族を返してくれ!」と北斗に極刑を求めた。もちろんそれは当たり前の感情であると思う。自分が同じ立場だったら、同じことを言うだろう。
2人目の遺族は少し違った。家族を返してほしいのは当たり前だが、北斗に「生きて罪を償ってほしい」と言ったのだ。ここの表現・言葉は私には伝えにくいのでぜひ作品で確認して欲しい。


物語はついに終盤へと向かう。
ここまでしっかりと書いていてなんだが、結果は作品を読んで確認して欲しい。
橋爪北斗の壮絶な人生を、作品を通して感じてほしい。


読了して正直、優馬くんが演じる橋爪北斗が想像できなかった。でも、だからこそ楽しみなのも事実である。
優馬くんが演じる橋爪北斗はいったいどのようなものになるのだろう。今から楽しみである。

優馬くんの主演ドラマ「北斗~ある殺人者の回心~」は2017年にWOWOWドラマにて放送予定です。
きっとレンタルも出るでしょう。それまで待てるか不安でしたが、まさかの友だちがWOWOW加入していて、ダビングしてくれるということなので甘えようと思います(*^^*)


長々とお付き合いありがとうございました!
ぜひ、皆さんも読んでみてください!

*1:回心(かいしん)[名](スル)キリスト教で、罪のゆるしと洗礼によってひきおこされる、心の大きな転換。@goo辞書より引用

*2:最も重い刑。死刑。